Sustainability Report 2024

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Sustainability Report 2024

サプライチェーンマネジメント

基本的な考え方

世界約10か国でプロジェクトを展開する当社にとって、公正かつ公平な調達、および、資機材・役務を提供するサプライヤーの管理は重要な課題の一つと認識しています。当社では、公正かつ公平な競争を阻害する行為の禁止、優越的地位濫用の禁止、サプライヤーの情報や技術の機密保持、不適切な利益授受の禁止などを「調達倫理指針-細則」に明記し、調達業務の基本方針のみならず、当社の役員および従業員が、経営理念やサステナビリティ憲章、および業務を遂行する上での遵守事項をまとめた「行動規範」の下、社内の調達関連部署で遵守・実行することを規定しています。また、2022年にはサプライヤーに対しても同様に、労働・環境に関する法令遵守や腐敗防止、当社の人権方針の尊重などを含むESG(環境・社会・ガバナンス)に関する7事項を明文化した「サプライヤー行動規範」を制定し、2023年には、本行動規範の理解促進のための施策として、「サプライヤー行動規範ガイドライン」を発行しました。当社国内事業における国内サプライヤー約70社を招待した、2024年のサプライヤーフォーラムにおいては、人権尊重における取組みについて説明をいたしました。今後も同フォーラム等を通じてサプライヤーとの関係を強化し、競争力のある調達を実施するとともに、CSRを含むリスク管理、パフォーマンス評価等、サプライチェーンマネジメントの強化に努めていきます。

調達に関する実績

調達に関する実績 (グラフィック)
1 サプライヤーは、直接取引先のみ(2次サプライヤーは含まれない)

マネジメント体制

調達倫理指針-細則」並びに「行動規範」などに基づいた企業倫理・企業行動を徹底するため、管掌部署である、資材・情報システム本部長を構成員に含むコンプライアンス委員会を定期的に開催しています。2024年12月に開催したサステナビリティ推進委員会においては、当社のサプライチェーンマネジメントに対する社外評価と当社の取組みについて審議されました。

サプライチェーンリスク管理

当社は、グループ全体で、約2,000社のサプライヤーを通じ、年間で約3,800億円に及ぶ調達を行っています。このうち、主要サプライヤーからの調達額は約3,000億円になります。サプライチェーン上のリスクを管理するために、下記のようなアクションをとっています。

当社の資材調達部門員に対しては、下請法、調達コンプライアンス、情報セキュリティ、およびABCポリシーの社内講習等の受講を促し、コンプライアンスを遵守できるよう努めています。また、サプライチェーンにおけるリスク管理として、定期的にサプライチェーンにおけるリスクの特定および評価を実施し、それらのリスクに対しての予防・軽減策の検討・実施をしています。2024年からは、海外拠点を含むグループ全体の資材調達部門によるグローバルサプライチェーンフォーラムを開催し、CSR関連業務のグループ全体での標準化等、サプライチェーン機能強化のための議論を実施し、来年度以降の活動計画を策定しました。

サプライヤーに対する取組みとしては、労働・環境に関する法令やサプライヤー行動規範の遵守、人権方針の尊重などを求め、当社定型の契約書に遵守事項として盛り込んでいます。サプライヤーの選定においては、国内・国外、経営規模の大小等を問わず、新規取引希望者に対しても参入機会を提供するよう努め、公正かつ公平な評価に基づき、契約先を決定しています。評価項目は、価格、品質、納期、技術力、財務状況に加えて、各国の法令順守、当社ABC ポリシー、HSE、CSRリスク管理等、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点も取り入れています。当社オーストラリア事業においては、入札時に人権に関する自己評価アンケートおよびGHG排出に関する調査を実施し、その評価を入札時のサプライヤー評価に組み入れています。また、サプライチェーン上の人権リスクの洗い出しを実施し、リスクの更なる評価、監査プロセス、改善へとつなげるフレームワークの最終化を進めています。また、サプライチェーンにおけるリスク管理強化の一環として、主要サプライヤーとのHSE連絡会を開催し、HSE・品質などの情報交換やリスク緩和策について意見交換を行うことで、HSE意識やサプライヤーのエンゲージメント向上の機会を設けています。

主要サプライヤーおよび上記の取組みを通じてリスクが高いと評価されたサプライヤーに対して、対話を通じた改善活動の促進、契約見直しを含むリスクの回避・低減等を図っています。

サプライヤースクリーニングおよびアセスメント

サプライチェーン上のCSRリスクのスクリーニングプロセスとして、サプライヤーによるCSR自己評価アンケートを実施し、2024年は336社から回答を受領しました。過去3年間ではサプライヤーの46.8%に対しCSR自己評価を実施しています。CSR自己評価アンケートは、環境、社会(人権・労働、安全衛生、地域貢献)、ガバナンス(公正な企業活動、取引先への働きかけ)の項目で構成されています。また、CSR自己評価アンケートの回答結果や発注金額、セクター・コモディティリスク(業界・業種)およびカントリーリスクを考慮し、より詳細なリスク評価とCSRに関する取組みの向上を図るため、CSR監査を実施しています。2024年は、当社主導の第二者監査を2社、外部コンサルタントを起用した第三者監査を2社に対し実施しました。第二者監査は当社のCSR自己評価アンケートを用いて実施、第三者監査は外部コンサルタントの基準(ILO条約、SA8000等の国際基準を元に作成)を利用し、環境、社会(労働、賃金と労働時間、安全衛生)、管理システムの観点から工場や建設現場等での実地監査として実施しました。これらのCSR自己評価アンケートや監査の結果、重大な発見事項はありませんでした。

上記サプライヤーCSR自己評価アンケートの実施、CSR監査、および改善策の議論を通じてサプライチェーン全体のリスク低減に努めていきます。継続的なサプライチェーン上のサステナビリティに関わるリスクの特定と改善のため、資材調達部門員に、SA8000の監査人資格を保持している社員を配置しています。

サプライヤー行動規範およびサプライヤー行動規範ガイドライン

サプライヤーの協力のもとサプライチェーン全体のESGリスク低減に取り組んでいくため、当社がサプライヤー・コントラクターに要請するESGに関する下記7事項を明文化した「サプライヤー行動規範」を2022年7月に制定しました。

サプライヤー行動規範

項目

概要

人権・労働

児童労働や差別の撤廃、安全かつ衛生的・健康的な労働環境の確保を含む労働者保護など人権に関する原則

公正な企業活動

贈収賄、談合・カルテル、反社勢力との関係の禁止など

環境

事業活動による環境破壊の防止、CO2削減など

機密保持

事業活動を通じて得た個人情報、秘密情報の保護

地域社会との共生

地域社会との共存、共栄の推進

不正予防・発見

従業員に対する啓蒙と報告窓口(ホットライン)の設置

情報開示

ESGに関する情報発信と透明性の確保

本行動規範は、当社ホームページにて公開するとともに、標準契約書の中に含める形式でサプライヤーに遵守を求めています。また、一定の契約期間・契約金額以上の重要取引は、入札時ESG評価を実施し、サプライヤーのスクリーニングおよびリスク対応策の検討に活用しています。

2023年6月には、「サプライヤー行動規範」の内容をより深く理解し順守いただくために、解説・対応例をまとめた「サプライヤー行動規範ガイドライン」を発行しました。

調達倫理指針-細則

サプライヤー行動規範 サプライヤー行動規範ガイドライン

ケーススタディ: INPEXオーストラリアの地元企業採用計画

イクシスLNGプロジェクト に関連した「INPEXオーストラリアの地元企業採用計画(IPP)」は、オーストラリアのサプライヤー企業に対し、完全、公正、かつ合理的な機会を提供することを約束しています。当社の契約および調達のプロセスを通じて、サプライヤー・コントラクターにこのコミットメントは伝えており、提出された計画および目標に対しての地元企業の達成水準の評価は、定期的な進捗報告書および主要サプライヤー・コントラクターとの定例会で行われます。

INPEXオーストラリアのウェブサイトに設けたサプライヤー向けポータルは、INPEXオーストラリアとの取引機会を求めるサプライヤーにガイダンスを提供1 しています。

1サプライヤーへの取組み(INPEXオーストラリアのコーポレートサイトより)