Sustainability Report 2024

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Sustainability Report 2024

ステークホルダーからの意見への対応

各種お問い合わせ窓口の設置

当社ではすべてのステークホルダーがアクセスできるよう、各種お問い合わせ窓口を運用しています。通報者や相談者のプライバシー保護に十分配慮し、匿名での意見も受け付けています。

各種お問い合わせ窓口

窓口 

対象 

内部通報窓口 

役員、従業員

社外ステークホルダーの通報窓口 

株主・投資家、取引先(サプライヤー/コントラクター、警備員を含む)、NGO、地域住民 

労使協議会 

従業員 

内部通報窓口の整備・運用

内部通報窓口として、差別、人権、ハラスメントを含む通報・相談全般を日本語・英語で受け付けるヘルプラインに加え、操業地域での言語を含む約20か国語に対応するINPEXグローバルホットラインを設置しています。内部通報窓口に関する体制は以下の通りです。ヘルプラインは社内及び社外(弁護士事務所)、INPEXグローバルホットラインは外部委託先に窓口を設け、通報・相談はそれぞれ匿名で行うこともでき、あらゆる通報者の環境に配慮しメール・電話・郵便などいずれも利用可能です。

通報・相談時の調査にあたっては、社内規程である「内部通報規則」に通報者に対する不利益取扱いの禁止を定めているほか、当社の内部通報業務従事者や子会社の内部通報窓口担当者に対して研修を実施するなど、通報者が不利益な扱いを受けないよう保護を徹底しております。また、調査の結果、ハラスメントを始めとするコンプライアンス違反が認められた場合には、懲戒処分を含む是正措置や、研修や社内での啓発を含む再発防止策を講じています。

その他、内部通報窓口については、「内部通報への対応」をご覧ください。

社外ステークホルダーの通報窓口の整備・運用

当社は国内外の全ての拠点において、寄せられた地域住民からの意見の記録管理を行い、真摯な対応を心掛けています。 主要な拠点である、日本、オーストラリア、インドネシア、アブダビにおいては電話やEメール、手紙、事業所担当者との直接の対話に加え、地域や事業の内容に応じたさまざまな手段を通じて意見を受け付けています。

苦情処理の管理

当社の事業活動によって外部のステークホルダーから苦情が生じる可能性があることを認識しており、外部からの苦情を特定、調査、解決するための明確なプロセスを定めて地域社会およびステークホルダーに対する対話活動を行っています。寄せられた意見は関係者内で共有し、意見の傾向のモニタリングを実施するとともに、新たな懸念事項を早めに特定し、リスクを未然に低減できるように努めています。また、地域住民からの苦情や申し入れについては、それぞれの現地語で対応し、所定の対応手順に従い、ステークホルダーと協力して事実確認を行い、適切に対応しています。

なお、2024年には、いずれの拠点においても、是正処置が適用される苦情の受け付けはありませんでした。

苦情およびお問い合わせ後のフローの例

苦情およびお問い合わせ後のフローの例 (グラフィック)

地域住民から寄せられた意見

当社がオペレーターとして事業を行う拠点において、2024年度に受け付けた、社外ステークホルダー対応手順に従った地域住民からの問い合わせや意見の内容の内訳は、以下のとおりです。

2024年に受け付けた地域住民からの問い合わせや意見の内容の内訳 (日本、オーストラリア、インドネシア)

2024年に受け付けた地域住民からの問い合わせや意見の内容の内訳(%) (日本、オーストラリア、インドネシア) (円グラフ)

ケーススタディ:苦情事例と対応策

苦情事例としては、当社長岡鉱場での夜間の騒音について苦情がよせられました。この件について当該者に事情をヒアリングした結果、防音対策が不十分であったことから、追加での防音対策を速やかに行いました。また秋田鉱場では基地内の鉄柵が壊れかかっており、通行者に危険が及ぶ可能性があるとの通報を受け、ただちに修復を行いました。

労使協議会

INPEX労働組合は本部・支部体制であり、5つの主要な国内拠点において支部を設けていますが、その他の国内出向者や支部が無い拠点については、中央本部で一括管理と対応を行なっています。中央本部および支部毎における労使間のコミュニケーションや対話については、年2回開催される中央労使協議会や五支部労使協議会などを通じて、密に行っています。また、海外駐在員との連携については、組合役員が年1回の頻度で海外拠点に直接伺い、現地での労働・生活実態調査を行う他、訪問が出来なかった地域からは実態調査を書面で聴取し、海外拠点における実態や駐在員からの要望などを会社側(本社人事U・海外事務所)と共有することで、問題の解決と改善に努めています。

地域社会との関わり

2024年末時点で当社が権益を有する37件の生産・商業運転中のプロジェクト(石油・天然ガスプロジェクト27件を含む)と6件(うち、石油・天然ガスプロジェクト1件を含む)の開発・建設中のプロジェクトのすべてにおいて、コミュニティとの協議が実施されています。これらのうち、当社がオペレーターを務めるプロジェクトは、以下の通りです。

生産・商業運転中のプロジェクト操業地点

  • イクシスLNGプロジェクト(オーストラリア・ダーウィン)
  • 直江津LNG基地および国内パイプラインネットワーク(日本・新潟)
  • 南長岡ガス田(日本・新潟)
  • 成東ガス田(日本・千葉)
  • 八橋ガス田(日本・秋田)
  • 太陽光発電所「INPEXメガソーラー上越」(日本・新潟)

開発・建設中のプロジェクト

  • アバディLNGプロジェクト(インドネシア)
  • かたつむり山発電所 地熱発電事業(日本・秋田)

本社と海外事務所では環境、社会、ガバナンスに関する共通の課題や新たな課題に対応するため定期的なミーティングを開催し、各管轄地域におけるステークホルダー・エンゲージメントについて最新情報を共有し今後の行動計画策定に役立てています。

日本における取組み

当社の国内事業拠点(新潟、南阿賀、長岡、柏崎、上越、秋田、千葉)では、地域社会の担当窓口を設置し、操業地域のステークホルダーとの対話を実施しています。

また、例年、柏崎で開催されるマラソン大会の協賛やボランティア参加など、地域イベントに積極的に参加しているほか、新潟、長岡、柏崎、上越、秋田の各地域で行われる夏祭りの花火打ち上げ協賛、長岡では地域住民の方々との年2回の森づくり活動を通じて環境保全への取組みも行っています。加えて、当社のガスサプライチェーンの中核施設であり、オーストラリアのイクシスLNGプロジェクトから出荷されたLNGを受入れている直江津LNG 基地では、地元の方々や市役所、官庁などに向けて2か月に1回ニュースレターを発行し、基地内での各種作業の様子や安全操業への取組みなどを紹介しています。また、地元で行われるソフトボール大会など、行事への参加を通して、地元の方々との交流を深めています。

ケーススタディ:地域住民へむけた現場見学会

日本国内でパイプラインを敷設する際には、自治体やルート沿線住民・企業に理解を得られるよう、事前説明・回覧版による工事周知や工事現場見学会を行っています。 パイプラインルートは原則公道などの公共用地下を選定しているため、基本的には住民の移転は発生しません。 

例外的にシールド・推進工事の場合は、ルート沿線に各工事規模に応じた工事用地を必要最小限の面積で借地するべく土地所有者と交渉をおこない、工事期間に応じた借地料を支払っています。また、農地(田・畑)を借地する場合は作付け状況を勘案して期間に応じた収穫補償料も支払っています。工事計画書に基づき土地所有者への事前説明、事前立会をおこない、工事終了後は速やかに原形復旧をおこない土地所有者の承諾を得て、工事用地の返地をおこなっています。 

オーストラリアにおける取組み

オーストラリアでは、行政、産業界、住民団体などの主要なステークホルダーやより広範な地域社会と積極的に関わり、緊密に連携することで、地域社会において強固な信頼関係を築けるよう努めています。また、地域社会やステークホルダーと当社の事業に関する情報を共有することで、事業がもたらす影響を理解するとともに貴重なフィードバックを得ています。

エンゲージメント活動に際しては、ステークホルダー・エンゲージメントの原則に沿い、以下の点に留意しています。

  • ステークホルダーの適切な特定と優先順位付け
  • 優先順位の高いステークホルダーとの定期的なエンゲージメント
  • 先住民、先住民団体および伝統的な土地の権利保有者との適切な関与
  • 懸案や影響に関する事前の情報提供
  • 情報アクセスの容易化
  • 一貫性のある迅速なコミュニケーション
  • 継続的なモニタリングと改善

エンゲージメント活動から得た知見については、当社事業や潜在的な影響の管理に役立てるとともに、影響を受けるステークホルダーの意見を検討し、事業における意思決定やその他の活動に反映させています。

当社は、エンゲージメントの目的やステークホルダーの要望に応じて、対面・オンライン会議、産業界や地域のイベント、電子メール、メディアやSNS、広告、出版物など、さまざまなツールを用いて情報提供を行っています。2024年度は、行政、産業界、企業、地域社会等のステークホルダーに対して300回以上のエンゲージメントを実施しました。

また、お問い合わせ用のフリーダイヤル、メールアドレス、問い合わせフォームをウェブサイトやその他媒体で公開し、地域の方々からのご意見を受け付けています。2024年度の問い合わせ件数は583件で、前年度の380件から大幅に増加しました。最も多く寄せられた問い合わせは、雇用機会に関するもので、その内23%がオーストラリア在住者からの問い合わせ、54%が海外からの問い合わせでした。

キンバリーコミュニティアップデート2024 ノーザンテリトリーにおける2024年のコミュニティ対話 Community Feedback in Australia

インドネシアにおける取組み

インドネシアのアバディLNGプロジェクトでは、プロジェクト立地地域のコミュニティや住民など、プロジェクトにより影響を被るステークホルダーだけでなく、中央政府、州・地方政府、NGOを始めとする幅広いステークホルダーを特定し、各ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを実施しています。特に、プロジェクトが立地する地域には、当該地域出身の従業員を常駐させ、地域社会と日々積極的な対話を心掛けています。

また、現在実施中の環境社会影響評価では、インドネシアの環境社会影響評価制度(AMDAL)の一環として開催する住民説明会(パブリックコンサルテーション)の実施に先立ち、AMDAL の要求事項のみならず、国際的な環境社会ガイドラインであるIFC Performance Standards(IFC PS)で規定されているステークホルダーとの関与に関する要求事項に基づいたStakeholder Engagement and Public Consultation Plan(SECP)を策定し、同Planに準じた取組みを実施しています。

これまでの環境社会影響評価の各工程におけるステークホルダーとの関わりは、以下のとおりとなっています。

環境社会影響評価の各工程におけるステークホルダーとの関わり

時期

工程

ステークホルダーに関する取組み

2018年

ステークホルダーの特定

  • プロジェクト実施における幅広いステークホルダーを特定し、ステークホルダーマッピングを作成。

2019年

Stakeholder Engagement and Public Consultation Plan (SECP)の策定

  • インドネシアの環境社会影響評価制度における要求事項、並びにIFC PSのステークホルダーとの関与に関する要求事項を特定。
  • 上記の要求事項を網羅したSECPを策定。

AMDALにおける住民説明会の実施

  • プロジェクトの立地地域において、AMDALにおける住民説明会を開催し、地域社会の関心事項を聴取。

KA-ANDALの策定

  • 上記の住民説明会で聴取した地域社会の関心事項も考慮し、環境社会影響評価の仕様書 (KA-ANDAL)を策定。

現況調査

  • FGD (Focus Group Discussion)、Household Survey、及びKII (Key Informant Interview)などの対話型の調査を実施し、被影響コミュニティの現況を把握。

2020年~
2021年

影響評価

  • 建設時、及び操業時における被影響コミュニティへの影響を評価。当該影響評価では、地域社会の関心事項に関する影響評価も実施。

2022年~

環境管理計画・モニタリング計画策定

  • 上記の影響評価の結果も踏まえ、環境管理計画・モニタリング計画を策定。
  • Technical Evaluation Meeting(大学教授等の有識者から構成される専門家会合)、及び、AMDAL Commission Evaluation Meeting(現地政府、現地コミュニティの長、現地住民、現地NGO等から構成される会合)で受領したすべてのコメントに対応。

2023年

対象地域を拡大

  • プロジェクトの立地地域に隣接する南西マルク県及び住民との対話に基づき同県を環境社会影響評価の対象地域に追加。

2024年

AMDAL文書の最終化

  • AMDAL Commission Evaluation Meetingを再度開催し、現地ステークホルダーからのコメントを再度受領し、AMDAL文書を最終化。

アブダビにおける取組み

アブダビ陸上探鉱鉱区(Onshore Block 4)プロジェクトでは、プロジェクトサイト周辺の地域コミュニティへの情報開示を積極的に実施し、当社従業員による現地語での丁寧かつタイムリーな対話を継続しています。

本プロジェクトで掘削作業を実施するエリアの周辺には、地域コミュニティの居住区や農地が立地しています。環境社会影響評価では、プロジェクトにより影響を受けるステークホルダーを特定し、その地域的分布を把握しています。また、プロジェクトの実施によるステークホルダーへの影響を評価し、その結果を踏まえ影響低減策や環境モニタリングを計画、実行しています。本プロジェクトでは、プロジェクトサイト周辺で大気質や騒音レベルの環境モニタリングを実施しています。

サイトで掘削作業等を開始する前には、自治体と協力して地域コミュニティへのプロジェクトブローシャーの配布およびショートメッセージサービスの配信を行い、作業内容、作業期間、作業による影響、問い合わせ先を周知しています。地域コミュニティから質問やご意見をいただいた際には、対面や電話等により速やかに応答し、透明性の高いコミュニケーションに努めています。