Sustainability Report 2024

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Sustainability Report 2024

水資源の管理

水リスクの評価及び水ストレスの高い地域の特定

当社は、WRI1が開発した水リスクのマッピングツールである「AQUEDUCT」を用いて、全オペレータープロジェクトが立地する地域の水リスクを毎年確認しています。確認する水リスクには、水資源への依存、事業が及ぼす影響、将来的な水需要や水質の変化、地域の規制や、社外ステークホルダーからの評判などが含まれます。また、2024年にはコミットメントの遵守、推進を一層図ることを目的に、全社的に測定可能な定量目標として、「水ストレスの高い地域における淡水取水ゼロの維持」を策定しています。2024年末時点で当社がオペレーターとして参画する石油・天然ガスプロジェクトは、生産中のプロジェクト5件と開発中のプロジェクト1件です。このうち、開発中のアバディプロジェクトの実施エリアは水ストレスの高い地域となっています。このプロジェクトにおいては、海水淡水化装置を導入することで、淡水の取水は行わない計画となっています。また、探鉱ステータスのアブダビのオンショアブロック4の事業エリアは水ストレスの高い地域とされていますが、この地域では、水供給企業から海水淡水化による水を調達することで、地下水等の淡水取水は一切行われていません。従い、2024年は、水ストレスの高い地域における淡水取水ゼロを達成しています。

地域の水リスクは様々な影響を受け、時間と共に変化することから、今後も継続して定期的に水リスクの確認を行い、高い水リスクが確認される場合には、ミティゲーション・ヒエラルキーに基づき、追加的な対策を計画・実行します。

1World Resources Institute:世界資源研究所

AQUEDUCTを使用して評価される水リスク問題のリスト

種類

指標の名称

説明

物理リスク(量)

WS

水使用に伴う水ストレス

WD

枯渇リスク

IAV

水供給の年次変動リスク

SEV

水供給の季節変動リスク

GTD

地下水面の低下リスク

RFR

河川の洪水リスク

CFR

沿岸の洪水リスク

DRR

干ばつリスク

物理リスク(質)

UCW

未処理排水の流出リスク

CEP

沿岸水域の富栄養化リスク

規制・評判リスク

UDW

飲料水の確保リスク

USA

衛生リスク

RRI

ESG評価リスク

国内の2024年リスク評価結果と2030年予測のリスクマップ

リスク評価結果に関連するさまざまなグラフとデータの視覚化を示すスクリーンショットのコラージュ。

効率的な水利用に資する取組み

各オペレータープロジェクトにおける水利用状況の確認と改善を目的とした水バランス調査の結果をもとに、各施設・プロセスごとの詳細な水利用状況の把握・分析を行い、これら結果も反映しながら、各プロジェクトにおいて継続的な水の消費量削減や廃水の質の向上を目指しています。

淡水の利用

淡水取水量推移(国内・海外)

単位:千 ㎥

淡水取水量推移(国内・海外) (棒グラフ)

水資源のなかでも、淡水の取水管理は当社の水管理における主要課題であると認識しています。国内外のオペレータープロジェクトでは、取水量及び石油・天然ガスに随伴する産出水の排出を管理し、水資源への影響を低減する取組みを実施しています。当社のオペレータープロジェクトでは、淡水(上水、工業用水、地下水) を主に冷却、発電、及び掘削作業といった用途に使用しています。2024年度は、当社全体で約1,590千m3の淡水を取水しました。

また、国内においては、通常の冷却、掘削作業といった用途の他、冬季の消雪散水などのためにも地下水を使用します。淡水使用量の削減のため、冷却水の循環利用や消雪散水設備への自動発停装置の導入などに努めています。

イクシスLNGプロジェクトにおいては、水使用量削減に向けて、LNG 基地内の施設における淡水使用量の調査を実施し、プロセスからの処理廃水及び発電施設からの廃水蒸気水などの再利用の可否について、費用対効果を勘案し検討を進めています。

海水の利用

イクシスLNGプロジェクトの海上生産施設では冷却水として、また直江津LNG 基地では気化器における熱交換のために、淡水の代わりに海水を利用しています。これらの拠点で利用される海水は、取水温と排水温の温度差や残留塩素濃度などに関する操業国の法令や国際的なガイドラインの基準を満たしていることを確認した上で、海域に排水しています。また、水リスクの高いアブダビにおいても地下水等の淡水を利用する代わりに、淡水化した海水を用いています。

産出水の排水管理

産出水排水量推移(圧入・排水)

単位:千 ㎥

産出水排水量推移(圧入・排水) (棒グラフ)

石油・天然ガスの生産操業に伴い発生する随伴水は、地下に還元圧入、又は事業を実施する国及び国際的なガイドラインの排水基準を満たすことを確認した上で、排水しています。2024年度に発生した総随伴水量約85万m3のうち、33%は還元圧入し、残りは適切な処理を行った後、河川又は海へ排水しました。

生産水(随伴水)の適切な処理・管理

各オペレータープロジェクトにおける生産水は、健全性の保たれた圧入井への圧入・地下還元、もしくは水処理システムによってそれぞれの国・地域の法令等により定められた基準値を満足したうえで、河川や海域に放出しています。海洋への生産水の放出においては、従来の分散している油分のみを対象とした規制のみにとどまらず、溶解している炭化水素成分も含んだ規制値を採用する国・地域も散見されます。イクシスプロジェクトの操業においては、MPPE(マクロポーラスポリマー抽出)による3次高度処理システムも採用し、溶解性炭化水素類も除去したうえで、基準値を満足した生産水を海域に放出しています。

水管理に関する教育・訓練

国内の操業現場のスタッフを対象に、水の効率的な利用・適切な管理を実践するための教育・訓練を継続的に実施しています。社外講師を招いた「鉱山保安法と水濁法」をテーマとしたセミナー等を実施し、今後も適宜スタッフの知見、意識向上に向けた取り組みも行っていきます。