先住民との関わり
先住民との協調活動計画
当社は、オーストラリアにおいて、先住民と協力して持続可能で互恵的な関係を築くために、先住民協調活動計画(Reconciliation Action Plan: RAP)を定め、実行しています。
RAPは、当社が事業を展開する地域社会において、先住民との協調関係を促進するための実践的な行動計画を定めたものです。2024年度を通じて、先住民コミュニティとの信頼関係をさらに深め、地域社会に持続可能な社会的・経済的成果をもたらすためのさまざまなコミットメントを含む、「先住民協調活動計画(RAP)2023–2025」を引き続き実施しました。RAPの実施は、RAP運営委員会の監督下にあるRAPワーキンググループによって推進され、実施状況については社内外で定期的に共有1 しています。
当社における先住民の直接雇用従業員数は2024年度末までに54人に増加し、2025年度末までにRAP目標である60人(オーストラリアの全従業員の5%)を達成する見込みです。また、2023年度から2024年度までの2年間で、先住民企業との取引総額は1,950万豪ドルを超え、3年間のRAP目標である1,500万豪ドルを上回りました。
ケーススタディ1:ビジネスビジョンに富んだ先住民企業
バーディ・ジャウィ族が暮らすジャリジンは、西オーストラリア州キンバリー地域のブルーム市から北へ200km、ダンピア半島に位置する人里離れた小さなコミュニティです。
ジャリジン・アボリジナル・コーポレーション社(DAC)が運営するジャリジン空港は、当社の掘削作業やブルーム沖450kmに位置する当社イクシスLNGプロジェクトの沖合施設で働く労働者を輸送するヘリコプターの給油基地として、2000年代初頭から当社の活動を支えてきました。
DACの主な優先課題はジャリジン空港の拡張と改良であり、それは経済的繁栄が、コミュニティの自己決定、自己啓発、財政的自立への架け橋になるという信念に支えられています。2011年、ジャリジン空港を改良するためにブルーム国際空港から数百万ドルの融資を受け、2018年に融資が完済されたことで、DACは2022年に空港の完全所有権を取得し、オーストラリア初の先住民が所有、運営する認定空港となりました。
当社に対しヘリコプターサービスを提供するPHI Aviationとの契約を通じて、同空港は、地元住民に安定した雇用とスキルアップの機会を提供し続けています。DACは現在、約100人の労働者を雇用しており、その2割がジャリジン空港で雇用されています。
DACのネイサン・マカイバーCEOは、空港からの収益が地域のプログラムに再投資されていることに触れ、「当社は、女性と子供のためのセーフハウス、男性のための作業場、ロードハウス、雑貨店、コミュニティ住宅、キャンプ場など、コミュニティの自立と福祉にさらに貢献するさまざまなサービスを支援できることを誇りに思っています」と述べています。
ジャリジン空港は、当社の事業にとって重要な役割を担っており、DAC の様なステークホルダーとの連携を通じ、当社は、キンバリー地域の経済発展に貢献することに尽力します。
ケーススタディ2:サバンナ火災管理を通じた自立支援
当社がオペレーターを務めるイクシスLNGプロジェクトでは、オーストラリア北部準州においてサバンナ火災管理プログラムの実施を継続しています。このプログラムは、同準州ダーウィン市のイクシスLNGプロジェクト陸上施設からの温室効果ガス排出をオフセットするとともに、持続可能な土地管理、地域社会とのつながり、先住民の伝統的知識の保護を促進することを目的としています。
このサバンナ火災管理プログラムによって資金提供を受けた事業の1つに、ティウィ・リソース社が管理するプロジェクトがあります。このプロジェクトは、メルビル島とバサースト島にある先住民の保有地約8,000平方キロメートルで実施されるもので、これらの島々は、数千年もの間、ティウィの人々が住み続け、豊かな文化と生物多様性で知られています。
2016年以来、このプロジェクトでは100人以上の先住民とその家族が、ティウィ自然保護管理員とともに例年火災計画とその運用に積極的に関与しています。現在までに、90人が火災管理活動に安全に参加するための認定訓練を受けています。
ティウィ・リソース社は、この度、これまでにサバンナ火災管理プログラムに参加した組織の内、初となる、独立経営の移行に成功しました。これによりティウィの人々は、外部資金から完全に独立した先住民所有の炭素事業への移行という、コミュニティの自立と地元企業の発展に向けた重要な一歩を踏み出すことができました。
文化遺産の保護
オーストラリアでは、当社が事業活動を行う地域の文化遺産を保護するため、文化遺産管理計画を策定し、実行しています。文化遺産に関しては、イクシスLNG陸上処理プラントが立地するダーウィン地域のララキアの土地や水域の伝統的な所有者として、さまざまな経歴や経験を持つララキアの人々が中心となって構成されるINPEXララキア・アドバイザリー・コミッティに相談しています。
イクシスLNG陸上処理施設においては、建設の初期段階からララキアの文化遺産保護監査員を導入し、周辺地域の遺跡への影響を最小限に抑える努力を行い、先住民にとって重要な文化財の保護に取り組んでいます。