各国での社会貢献活動
2024年度の活動実績
当社は、社会のニーズに応え、地域の社会経済発展を支援するために、社会貢献プログラムを実施しています。2024年度は約34億円の社会貢献投資を行いました。
日本
日本での社会貢献活動は、ステークホルダーとの対話を通じ、社会的課題の解決や地域社会の発展に資する社会貢献活動を「環境」、「教育・次世代育成」、「地域社会支援」、「芸術・スポーツ」に重点を置き実施しています。2024年度に実施した主な取組みは以下のとおりです。
- 障がい者スポーツ支援
ブランドメッセージ「地球の力で未来へ挑む」のもと、障がいを問わず誰もが活躍できる社会を目指し、日本パラスポーツ協会(JPSA)とのオフィシャルパートナー契約や、デフビーチバレーボール協会への協賛、デフリンピック100周年を記念した「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」のトータルサポートメンバーとしての協賛契約を通じて、障がい者スポーツの振興に貢献しています。また、障がい者サッカー連盟(JIFF)のインクルーシブ教育プログラムにも協賛しています。このプログラムは、障がい者スポーツの工夫や価値を小・中学生に体験型授業として伝えていくものです。 - 社内募金
従業員有志によるINPEX 社内募金を行っています。INPEX社内募金では、毎年従業員が選定した団体に対して、給与天引き方式で寄付が行われ、従業員が寄附した金額と同額を会社がマッチング募金として支援します。募金先としては「環境」「教育・次世代育成」「地域社会支援」を活動テーマとしたNGO・NPO団体が選定されています。 - 教育・次世代育成(芸術分野)への取組み
これまで数多くの有望な新人音楽家を世に送り続けてきた「第93回日本音楽コンクール」や、東京国際フォーラムを中心に開催される音楽イベント「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025」に協賛しています。2024年に協賛した「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024」では、社内募金の募金先であるあしなが育英会の支援家庭のご家族51名をご招待しました。

Photo by Taichi Nishimaki

Photo by Shun Itaba

- 南阿賀鉱場での取組み
南阿賀鉱場では、地元中学生と協業し、阿賀野市下黒瀬地区の道路花壇への種まきを実施しています。また、長岡鉱場では、農業関係者や関係団体と協業し、越路原プラント周辺のごみ拾いや花壇の整備を実施しています。

- 直江津LNG基地での取組み
直江津LNG 基地では、石油・天然ガスの誕生から私たちの生活に届くまでを映像で見せる基地内見学施設「INPEX MUSEUM」と、LNG タンクなど設備見学を組み合わせて、行政や地元住民、企業などからの社会見学の期待に応えています。2024年度は、地域の八千浦小学校の3年生に対して基地見学、6年生に対して出前授業を行いました。また、市内の環境保全団体が主催する海岸清掃活動への参加や、事業所の近隣道路におけるごみ拾い・草刈りなど、地域の一員として美化活動に取り組んでいます。このほか、9月には海象状況の悪化を受けて、基地桟橋に漂着したカヤックの釣り人救助を行いました。この活動により、上越海保より感謝状を授与されました。
オーストラリア
当社は社会貢献活動を通じて、事業を展開する地域社会の持続可能な社会的・経済的発展に貢献することを目指します。加えて、地域社会におけるステークホルダーとの信頼関係構築および社会的操業許可(Social License to Operate)の維持、当社のブランド向上、また当社で働くことを誇りに思う多様な人材の確保・維持など、多くの事業目標を支えています。
当社のオーストラリアにおける社会貢献戦略では、地域社会に貢献する自発的な貢献活動を実施するためのアプローチを定めています。この戦略には、社会貢献活動を通じ社会的効果を生み出すための枠組みとして、教育と訓練、健康と福祉、地元企業の能力開発、地域社会のつながり合いという優先事項の概要などがまとめられています。さらに、先住民、若年層、地元企業、そして当社が事業を行うより広範な地域社会を支援するプログラムに対し優先的に資金を提供しています。2024年度は、小規模な協賛金からより戦略的な社会貢献事業を含め、60件以上のプログラムを支援しました。重点分野別の支出額内訳は以下の図のとおりです。
また、スポンサーシップを通じた地域のイベントなどの支援や、被災したコミュニティの災害救援等といった重要な活動に寄付を提供しています。加えて、従業員のボランティア活動、地域団体のためのキャリア指導、能力開発、有償の広告・宣伝機会の提供などを通じた支援も行っています。
当社は引き続き、地域社会に有意義で長期的な利益をもたらすため、戦略的な社会貢献事業の構築と拡大に注力していきます。また、当社の社会貢献活動を支えるガバナンスとその成果測定の枠組みを強化するための取組みを進めています。
2024年のINPEXオーストラリアの自主的な地域社会投資(成果分野別)



ケーススタディ: STEAMプログラムの支援
2024年8月、イクシスLNGプロジェクトと北部準州博物美術館との新たなパートナーシップを通じ、科学、技術、工学、芸術、数学の分野の包括的な教育プログラム(STEAM)を支援することを発表しました。
総額130万豪ドルに及ぶこのSTEAMプログラムは、イクシスプロジェクトの環境社会オフセット契約に基づいて実施されるもので、次世代の教育的発達を促し、学生や若年層のSTEAM関連の好奇心を育むことを目的としています。カリキュラムに沿った学習と非公式の学習の機会を統合するもので、先住民の知識と視点を取り入れることもプログラムの重要な要素の1つです。
オーストラリアにおける最初の科学者とも言われる先住民は、65,000年以上にわたって陸、海、空を探検し、学んできたと言われます。STEAMプログラムでは、博物館のディスカバリー・センターにおけるワークショップやダーウィン各地での体験学習を通じて、この知識を学生や博物館の訪問者、その他のプログラム参加者と共有しています。
ダーウィン市近郊の海岸で開催されたプログラム初の体験学習では、3人のララキア自然保護管理員の案内のもと、14人の参加者は野鳥の観察を行い、地域の生物多様性とつながることの重要性を学びました。


インドネシア
インドネシアのアバディLNGプロジェクトにおいては、環境や伝統文化の保全、経済的機会の創出など、タニンバル諸島県を中心としたプロジェクト立地地域のコミュニティの持続的な発展に貢献すべく、2009年度からさまざまな活動を行ってきました。活動は、ステークホルダーとの対話を通じて地域のコミュニティのニーズを把握し、中長期的な視点で戦略的に策定したSocial Investment Strategyで取り上げた5分野((1)地元の経済力強化、(2)教育、(3)公衆衛生、(4)環境、(5)戦略的社会貢献)に重点を置き実施しています。2024年度に実施した取組みは以下のとおりです。
奨学金プログラム
タニンバル諸島県に拠点を置くLelemuku Saumlaki Universityで44名、南西マルク県に拠点を置くPattimura University Off-Campus Study Centerで100名の学生・教員を対象とした奨学金プログラムを実施しました。
健康プログラム
地域保健センターや行政と連携しながら、栄養に関する啓蒙活動、妊婦・乳幼児の健康診断、補助食寄付を実施しました。さらに、清潔な水へのアクセスを確保するための第一歩として貯水・給水施設の保守管理等を地域コミュニティ内で完結することができるように、地域住民による水管理チーム(Community-based clean water management team)作りをサポートしました。来年以降もサポートを継続し、貯水・給水施設の修繕・提供も行っていく予定です。
環境保全プログラム(植林プログラム・ビーチクリーンプログラム)
石油ガス上流事業の監督官庁(SKK Migas)と協働し、マングローブ、マンゴー、ジャックフルーツ等の植林活動を実施しました。また、地域住民とともに海辺の清掃活動を行い、ごみの回収・処理を行いました。

経済力強化プログラム
環境に優しい持続可能な農法を地域コミュニティとともに検討し、新しい農法での栽培を支援するプロジェクトを実施しました。加えて地域住民の主食であるバナナ・キャッサバを健康的なスナックに加工し販売するためのトレーニングを生産者向けに実施しました。
アブダビ
アブダビでは、当社、当社子会社のジャパン石油開発株式会社(JODCO)が設立した一般財団法人INPEX JODCO財団(INPEX JODCO財団)を通じて、教育、環境、文化の3つの分野に重点を置き、社会貢献活動を実施しています。
教育分野では、以下の取組みを実施しています。
- アブダビに関係する他の日本企業とともにアブダビ日本人学校にUAE国民子弟を受け入れるプログラムの実施を支援しています。
- アブダビ国営石油会社(ADNOC)とともにアブダビの小学校での公文式算数学習の実施を支援しています。
- 一般財団法人国際協力センター(JICE)が実施するUAE学生向けインターンシップ・プログラムに協力し、UAE学生をインターンとして受け入れています。
環境分野では、以下の取組みを実施しています。
- 2023年度から環境教育プログラムを実施し、2024年度には日本の高校生をアブダビに派遣し、アブダビ日本人学校の生徒とともにマングローブの植樹体験を実施しています。
- 2024年度からアブダビ環境庁とマングローブによる炭素固定量にかかる共同調査実施に向けた協議を行っています。
文化分野では、以下の取組みを実施しています。
- アブダビ国際狩猟乗馬展示会(ADIHEX)に出展し、鷹狩りや日本刀、飴細工、茶道などの日本の伝統文化を紹介しています。
- 茶道裏千家淡交会アブダビ協会の活動を支援しています。
- 在UAE日本国大使館、UAE柔道連盟とともに柔道日本大使杯を開催しています。
- 2023年度から、Emirates Falconers’ Clubとともに、日UAE鷹狩文化交流支援事業を実施しています。アブダビ日本人学校に鷹狩文化体験を提供するとともに、2023年度に実施した日本の鷹匠のUAE派遣の対企画として、2024年度にはUAEの鷹匠を日本で受け入れ、日本の鷹匠との交流を実施しています。



ノルウェー
当社の子会社である株式会社INPEXノルウェーは、現地法人INPEX Idemitsu Norge AS(IIN社)と ムンク美術館の間でスポンサーシップ契約を締結しています。IIN社は同館設立の1991年以来、前身であるIdemitsu Petroleum Norge ASの時代から30年以上にわたって同館へのスポンサー活動を継続しています。IIN社からの寄付金は同館の拡張や修繕、ノルウェーが輩出した著名画家であるエドヴァルド・ムンクの絵画である「叫び」と「マドンナ」の修復など、いくつかの主要プロジェクトの実現に貢献しています。
カザフスタン
当社子会社である㈱INPEX北カスピ海石油は、参画するカシャガンプロジェクトにおいて、アティラウ州及びマンギスタウ州における教育・医療・文化等に関するインフラ施設の整備を支援し、両州における地域社会の持続可能な発展を促進するための資金提供や支援活動を実施しています。
このほかに、当社独自の取組みとして、以下の社会貢献活動を実施しています。
まず、2024年5月には「落語と音楽カザフスタン公演2024」への協賛を行いました。この公演は「落語を介して日本文化を広める会」が主催し、アスタナ市およびアルマティ市にて計3公演が実施されました。約330名の方に来場いただき、カザフスタンの人々に日本の伝統文化を紹介する機会を提供しました。

また、人材育成事業の一環として、2024年9月にカザフスタン国営石油会社KazMunayGas(以下、KMG)の中堅社員6名を日本に招待し、CCS/CCUSをテーマにした約2週間の研修を開催しました。本研修では、東京大学の辻教授(工学系研究科システム創成学専攻)を主な講師として招聘し、CCS/CCUSに関する講義を行ったほか、当社施設を含む複数の実証実験地への現場見学等を実施しました。2025年度も同様の研修開催を予定しており、カザフスタンが掲げる2060年までのカーボンニュートラル達成に、人材育成の面からも貢献します。

さらに、2024年10月以降、AYALA Charity Foundationと提携して、アティラウ市新生児医療センターに対して新生児用の医療機器を寄贈する準備を進めています。同医療センターでは新生児の黄疸を非侵襲的に測定するための医療機器2台および新生児用光線療法ランプ6台を導入し、新生児医療の質を向上させることを目指しています。
これらの取組みを通じて、当社はカザフスタンにおける地域社会の発展と福祉向上に貢献しています。
その他財団を通じた支援
公益財団法人INPEX教育交流財団

本財団は、1981年に設立されて以来、インドネシアと日本の留学生の交流を通じて、両国の相互理解・友好・親善の発展に寄与することを目的として奨学支援事業を行ってまいりました。更に2022年度よりオーストラリアおよびUAEを支援対象国に加えました。現在までに受入れた奨学生は、インドネシア人146名、日本人67名、オーストラリア人2名、UAE人1名を数え、奨学生の多くは、各人が留学時に取り組んだ研究分野で、それぞれの母国と日本との友好・親善に貢献しています。
また、2025年度よりインドネシア、オーストラリアおよびUAEの高校生を日本に招き日本の高校生と交流を行う青少年国際交流事業並びに財団が指定する海外の大学から日本の大学に交換留学で派遣される学部生に対する奨学支援事業を開始しました。