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FY2022

Sustainability Report 2022 (for FY2021)

Sustainability Report 2022 (for FY2021)

セキュリティ・危機管理

基本的な考え方

昨今のセキュリティ事情を取り巻く不確実性の高まりを受け、海外のセキュリティ管理の継続的な強化・改善を図っています。また、火災・爆発・油流出などの各種の事故に備えるべく、緊急時対応計画を準備し、訓練を通じて対応力の強化に努めています。

セキュリティ管理の推進

近年、当社が事業を推進する主要な地域の一つである中東地域では、イランと米国の緊張関係の継続、アフガニスタンにおける政権交代、イエメン内戦の影響によるアラブ首長国連邦へのミサイル・ドローンの飛来などが発生しており、従来のセキュリティ情勢の認識に対する再評価が必要と認識しています。

こうした情勢変化を新たな脅威の一つと捉え、当社ではセキュリティ情勢に関する分析能力の強化、緊急時対応計画の策定など、地政学的リスクに備える取組みを強化しています。2020年には、セキュリティ事象を想定した緊急時対応計画書を策定するとともに、海外事務所とともに内容に基づく訓練を実施しました。2022年1月のカザフスタンにおける政治的な状況変化では、これらの取組み成果を活用し、現地事務所との連携を効果的に実施し、従業員の安全確保に努めました。

当社では、従業員が活動する地域におけるセキュリティ情報を常時収集・評価し、社内で共有しています。また、各地域の脅威レベルを評価し、これに基づいて出張者や駐在員に対する方針の立案や注意喚起を実施しています。世界各地で発生する暴動や誘拐、政情不安といったセキュリティ事象について、社内イントラネットで関連情報を周知することで、継続的に注意喚起をしているほか、社内セミナーや訓練を開催し、理解の促進や対応能力の向上に努めています。

また、当社の活動地域に対して、本社から人員を派遣してセキュリティレビューを実施し、活動地域全体、操業現場、移動経路、宿泊場所などの状況を把握して、適切な対策をとるように努めています。

このほか、セキュリティ事象に関する計画書を整備するとともに、訓練を定期的に実施し、計画の実効性の確認と要員の習熟に努めています。

緊急時・危機対応体制の整備

当社では、緊急時においてコーポレート部門とオペレータープロジェクト組織が連携して対応するシステムを構築しています。訓練などの機会を通じ、定期的に、緊急時対応関連文書の更新を行うとともに、危機対策本部室の備品や設備の維持・拡充を行っています。また、本社機能が一部喪失した場合に備えた、暫定危機対策本部の体制確立、連携強化に取り組んでいます。

2021年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染流行の中、2020年から立ち上げているコーポレート危機対策本部の活動を継続し、感染予防策、在宅勤務を含む事業継続対策など、当社の重要な事業の継続に必要な措置を関係部署間にて議論し実行しました。

緊急時対応訓練の実施

操業現場を持つ国内外の組織では、年間計画に基づき緊急時対応訓練を単独、または本社と連携した形で実施し、継続的な能力向上を図っています。

特に、当社が新たに進出した事業やプロジェクトと、万が一の大規模事故時の円滑な連携や効果的な対応を実現するため、合同訓練の実施に積極的に取り組んでいます。2021年には、新たに掘削作業を開始したアブダビ陸上油田の掘削プロジェクトや、新規に操業を開始した米国シェールオイルプロジェクトとの合同危機対応訓練を実施し、教訓を抽出しました。

また近年、新型コロナウイルスに代表される新たな感染症の脅威に加え、2019年の台風19号による当社パイプライン被害に代表される自然災害の激甚化、また2021年のコロニアルパイプラインの事例のようなサイバー空間からの攻撃による操業停止については、エネルギー業界もその標的の一つとなっています。当社では、こうした事象を新たな脅威と捉え、万が一の備えを強化しています。

自然災害の激甚化については、台風被害を踏まえた振り返りによる改善活動を推進しているほか、最新の政府ガイドラインを踏まえた行動計画の見直しに着手しています。また首都直下地震は本社地域における変わらぬ脅威との認識の下、毎年危機対応訓練を実施し、教訓を抽出しています。

また2022年3月には、国際関係の緊張化の中でサイバー攻撃のリスクが高まりつつある中、当社ではイクシスLNGプロジェクトの操業現場にてサイバー攻撃を受けた想定での危機対応訓練を実施し、教訓を抽出しました。

各訓練から得られた教訓を基に、既存のマニュアルの改善、新たな資機材・備蓄品の導入など、更なる危機対応能力向上に努めていきます。

暴噴・油流出事故への対応

石油・天然ガス開発では、大規模な暴噴・油流出事故だけでなく、生産精製施設にあるタンクや配管からの小規模な油流出事故への対応も求められています。これは、周辺住民の方々への安全・健康上の影響や、地域社会の経済活動への影響が懸念されるためです。

当社では、他社で発生した事故の教訓を踏まえて、坑井、パイプライン及びプラントなどでの事故管理に必要な予防・封じ込め・対応の全ての面で体制を強化しています。事故の予防を目的に規則や手続を整備し、一貫した管理を行っています。また暴噴時に海底の暴噴制御装置が作動しなかった際の備えとして、キャッピング装置を提供するWild Well Control, Inc. と契約しています。加えて、世界最大の油流出対応サービス提供会社OSRL(Oil Spill Response Limited)とも契約し、大規模な油流出に対応できる体制を整備するとともに、油流出に対応するための技術に関しても継続的な知見の獲得に努めています。