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FY2022

Sustainability Report 2022 (for FY2021)

Sustainability Report 2022 (for FY2021)

HSEマネジメントシステム

基本的な考え方

当社の事業活動における「環境安全方針」の実行を確かなものにするために、ISO9001やISO14001などを参照してHSEMS規則を2007年度に策定、さらにこれを国際標準であるIOGPのOMS5102に基づいて2017年度に改定しました。OMS510は、リーダーシップ、リスク管理、継続的改善、そしてそれらの実施を基本原則としたシステム(下記HSEMSの構成図を参照)をベースとしており、これに基づいて、必要なHSE関連文書(規則、要領、指針など)の作成やHSE組織の整備、各事業本部へのHSE技術支援、HSE教育訓練、定期的なHSE監査やHSEレビュー、各種のHSEコミュニケーション活動を中心に、PDCAサイクルを意識したHSEMSの継続的改善と実施を継続しています。

一方で、国内最大の鉱業所である長岡鉱場では、2003年度にISO14001の認証を取得し、現在も維持を継続しています。

2 IOGPの報告書No.510 “System Framework for controlling risk and delivering high performance in the oil and gas industry”

HSEマネジメントシステム(HSEMS)の構成図

HSEリーダーシップ

当社のHSEに対する意識を向上させるためには、「経営層が自らリーダーシップを発揮することが重要」という考えから、経営層が中心となって、積極的にHSE活動に取り組んでいます。2021年度に開催したHSE会議では、社長、コーポレートHSE委員となっている役員、国内外の組織の最高責任者、組合代表者らの参加の下、軽微な事故の削減、GHG排出量管理、メンタルヘルス管理の3つのテーマで議論が行われ、取り組むべきアクションアイテムが抽出されました。

また、経営層がHSEへのコミットメントを示し、現場の作業に伴うリスクを直接理解した上で、INPEXバリューの一つである「安全第一」を実現するために、現場へのHSEマネジメントサイトビジットを実施しています。2021年度も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で出張が難しい状況ではありましたが、感染拡大ピークの合間を縫って、2021年7月には世田谷区の新寮建設工事現場、10月には埼玉県のパイプライン建設事業所及び栃木県の両毛ライン複線化第一期工事現場、そして11月には山形県の酒田天然瓦斯、千葉県の京葉パイプライン株式会社及び千葉鉱場の計6か所に対し、上田社長を始めとする担当役員によるサイトビジットを実施しました。新寮建設工事現場では、近隣住民への配慮、熱中症及び感染症予防対策が確認されました。両毛ライン工事現場と建設事業所では、工事現場で作業を行うコントラクター向けの入構者教育において、コーポレートの規則や指針などをまとめ、新たな入構者へ説明を行っていることが確認されました。酒田天然瓦斯では、HSEマネジメントシステムを導入し、着実に浸透を図っていることが確認されました。また、訪問した池田副社長からは緊急時対応訓練の重要性が強調されました。京葉パイプライン及び千葉鉱場へは上田社長が訪問し、過去の台風災害を教訓とした対策の実施が確認されました。

いずれの現場においても、経営層と現場従業員の間でHSEの取組みや課題に関して率直な意見交換及び議論を行う有益な機会となりました。

また、コーポレートとオペレータープロジェクトは、HSEに関する定例会議の実施を通じて、各プロジェクトのHSE活動の取組み状況の共有及び施策についての意見交換を行っており、コーポレートからの情報周知も実施しています。

京葉パイプラインにおけるマネジメントサイトビジットの様子
千葉鉱場におけるマネジメントサイトビジットの様子

HSE重点目標及びHSEプログラム

当社では、HSEMSの継続的改善を実現するために、コーポレートにおいて毎年HSE重点目標を定めるとともに、HSEプログラムを策定して実行し、目標達成のための進捗管理を行っています。

2021年度は、OMS510の考え方に従って、HSE要領の新規策定並びに改定を進めました。オペレータープロジェクトのHSE管理に加え、ノンオペレータープロジェクトや各種事業へのHSE関与をHSEMSに含め、より有効かつ一貫性のあるHSE活動に取り組んでいます。

HSEリスク管理

HSEリスク管理とは、INPEXの事業及び操業への負の影響を最小限に抑えるために、HSEリスクを特定し、分析し、評価し、対応するためのプロセスを、プロジェクトにおいて体系的に適用することです。ISO31000及びISO17776に準じて定められたHSEリスク管理要領の要求事項に従い、プロジェクトにおけるHSEリスク管理の手順を定めています。

当社では、 INPEX Vision @2022に掲げる重大な事故ゼロに向けて、ライフセービングルールの遵守及びプロセスセーフティ管理に取り組んでいます。

HSEリスク管理の全社的な取組みを促進、徹底するための活動の一環として、本社では一元管理されたリスク管理ソフトウェアを通じて、全てのオペレータープロジェクトにおける重大事故災害3につながるリスク及びその他トップ10リスクの報告を四半期ごとに受領し、リスクがALARP4であることを確認するとともに、その要旨を経営会議へ報告しています。

3 大規模漏えいによる火災、爆発、毒性ガスの拡散などに代表される複数の死亡・重傷者を出したり周辺環境に深刻な被害を与えたりするような事象

4 As Low As Reasonably Practicable:合理的に実行可能な限りできるだけ低いこと

HSE教育訓練

2021年度は、講習会並びに訓練に加え、eラーニングの配信により、延べ3,748人・時間にわたってHSE教育訓練を実施しました。また若手技術系社員には、これとは別に労働安全管理やプロセスセーフティ・エンジニアリングに習熟するために、継続的に国内外での実践的な研修の機会を提供しています。

2021年2月、HSE力量・訓練要領を改定し、階層と役割に応じた必要なHSE教育・訓練プログラムを明示しました。

さらに、HSEを担当する従業員には、専門分野別の育成目標を見据えて、OJTの機会や専門機関が主催する講習への参加などを通して、HSE力量の向上を図っていきます。2022年度も実効性のある教育訓練プログラムの整備と実行に注力します。

HSEコミュニケーション

当社では、経営会議や定例取締役会でのHSE月次報告、コーポレートHSE委員会の開催、また社内向けには事故調査で得られた事故の教訓(LFI: Learning from Incidents)の共有など、経営層だけでなく、全社員に向けたHSEコミュニケーション活動に積極的に取り組んでいます。

その他、組織や個人の士気向上やHSE意識の向上を図り、会社全体のHSEパフォーマンスを向上させることを目的に、コーポレートHSE表彰を毎年実施しています。2021年度には、HSE優秀賞として団体1件、HSE活動賞として団体4件、個人5件、HSE特別賞として団体1件の計11件が表彰されました。

HSE文化の醸成

当社は、HSE文化の醸成に向けて、これまでHSEマネジメントシステムの整備、HSE教育訓練の実施、さらには事故からの教訓の共有などに取り組んできました。これらをさらに高いレベルに上げていくこと、また会社全体及び事業所ごとのHSE文化の現状を把握し、今後取り組むべき具体的な施策の検討材料とすることを目的に、HSE文化に対するアンケート調査を実施しました。2020年10月より本社を含む国内外の事業所を対象に実施し、2,400名超の従業員より得た回答を分析することで、各事業所の強みと弱みを把握することができました。この分析結果を活用し、国内と海外それぞれの強みをベストプラクティスとして全社に共有する一方で、全社的に強化すべき点についてはアクションプランを作成し、活動に取り組むことで、当社のHSE文化の更なる醸成を目指します。

HSE監査

HSEアシュアランス・ガバナンス強化の観点から、オペレータープロジェクトにおけるHSEマネジメントシステムの遵守状況を評価するため、定期的にHSE監査やHSEレビューを実施しています。2021年度は、オペレータープロジェクトを対象としたリスクベース方式5によるコーポレートHSE監査を国内向けに2件、海外向けに2件実施し、各プロジェクトにおけるHSEマネジメントシステムの遵守状況を確認しました。さらに、海外のオペレータープロジェクト、国内のパイプライン建設工事、加えて各所の水素・アンモニアプロジェクトなどのHSEレビューにも本社より参加しました。その上で、結果として合意した是正処置については、その進捗を管理し、必要であればコーポレートからのHSE支援を実施して、是正処置を確実に実施することで、継続的改善を推進しています。

5 リスクベース方式:監査計画時に被監査組織のリスク要因を考慮し、重点監査項⽬を絞り込むこと