Sustainability Report 2022

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Sustainability Report 2022

特集2: 社外役員との座談会

「INPEX Vision @2022」発表から1年、当社のサステナブル経営の現状や情報開示のあり方について、担当部署の社員も交え、社外役員との意見交換を実施しました。

橘高 公久 取締役専務
執行役員
経営企画本部長
法務担当

高橋 真沙子 経営企画本部
経営企画ユニット
気候変動対応推進グループ
マネージャー

木場 弘子 社外監査役

森 優子 経営企画本部
広報IRユニット
広報グループ
デピュティマネージャー

森本 英香 社外取締役

橘高 公久 取締役専務
執行役員
経営企画本部長
法務担当

高橋 真沙子 経営企画本部
経営企画ユニット
気候変動対応推進グループ
マネージャー

木場 弘子 社外監査役

森 優子 経営企画本部
広報IRユニット
広報グループ
デピュティマネージャー

森本 英香 社外取締役

テーマ 1

当社のエネルギートランジションの取組みに対する評価について

橘高

「長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision @2022)」発表してから約1年が経過しました。その進捗状況については、ステークホルダーの皆さまからのご関心の高い分野かと思いますが、社外役員の目線からこの1年間の取締役会等での議論を振り返ってどのような印象をお持ちでしょうか。

森本

昨年はINPEX Vision @2022の初年度でしたが、「石油・天然ガス分野」及び「ネットゼロ5分野」それぞれで着実な進捗があったものと評価しています。まずはウクライナ情勢を受けて世界全体が揺れ動く中で、当社はイクシスをはじめとする各プロジェクトを概ね安定的に稼働させ、エネルギーの安定供給という重要な役割を果たすことができました。
さらにネットゼロ5分野についても取締役会において相当の時間をかけて議論を行い、例えば水素・アンモニアの社会実装に向けて新潟県柏崎市における製造・利用の一貫実証試験を始めるなど、先進的な取組みを大胆に進めていると思います。
また、ネットゼロ5分野については、現時点では全ての分野で取組みを進める必要がありますが、特にCCS・CCUSや水素・アンモニアについては当社の技術・知見との十分な相乗効果が見込める分野だと思います。
今年1月には、当社が石油及び水素・アンモニア等のクリーンエネルギーの開発・生産事業を行うUAEのアブダビで取締役会を開催しました。スルタン・アル・ジャーベルUAE産業・先端技術大臣との意見交換の中で、ジャーベル大臣からはエネルギートランジションの実現や脱炭素、水素、クリーンエネルギー開発の分野で、当社とのパートナーシップを更に深化・強化していくことを期待するとの発言がありました。本取締役会の開催が、これまで石油・天然ガスで結ばれていた両国の強い絆を、ネットゼロ各分野でのパートナーシップによってさらに強めていく一つのきっかけになったのではないかと感じます。

木場

2022年は、ウクライナ情勢の影響で国民全体にエネルギー供給に対する不安が広がった年でした。そのような状況下で安定的に石油・天然ガスを届けることができたということは会社や社員の皆さんにとっても誇らしいことだったと思います。私もアブダビに行かせていただき感じるところがありました。
ネットゼロ5分野への取組みついても非常に積極的な1年でした。先ほど森本さんからもお話のあった実証試験に取り組む等、水素・アンモニア分野でのリーディングカンパニーとしての社会的責任を果たしています。
今後は、それらの取組みを様々なステークホルダーにいかに伝えるかが重要だと思います。特に従業員には積極的にINPEX Vision @2022を共有し、当社の意識の共有を図ることが重要だと考えます。社員が一丸となって「やろう!」という気持ちになって初めて成功に向かって動き出すのではないでしょうか。
また、当社のことを世間一般に知ってもらう取組みも企業価値の向上を図る上では重要です。広報活動の一環として、当社が今年1月から単独スポンサーとして提供しているテレビ番組1「地球との約束」については、日本各地の美しい自然と、そこで取り組まれている環境保全の活動を紹介する大変価値のある番組であると思います。このような良質な番組を提供することは当社の認知度や企業イメージの向上にもつながります。これからは、例えば自然との関わりの中で当社が何をしたいかなど、当社の立ち位置にもつながるような番組も観てみたいと思っています。

1 フジテレビ系列、関東エリアおよび新潟県にて放送

取締役会において相当の時間をかけて議論を行い、先進的な取組みを大胆に進めていると思います。

森本 英香

橘髙

気候変動対応というのは我々の事業の一つの柱でありますが、特に社内では上流事業の安定供給を継続していく上で対応するべき、いわば「リスク」と捉える議論に偏りがちです。ところが、取締役会という戦略議論の場に、この分野について特に造詣が深い森本さんにご参加いただき、我々執行部との間でキャッチボールをさせていただく中で、ネットゼロ5分野という形で「収益機会」として取り組んでいくことについて大変力強い後押しをいただいています。この一年、ネットゼロ5分野を推進する上で非常に心強く思っているところです。
木場さんからは約2年前に現在のINPEX Vision @2022につながる議論を始めたころから一貫して従業員をはじめとしたステークホルダーへの発信の重要性についてご指摘を頂いており、我々執行部としてもその点は本当に大事なことだと思っています。経営トップも含めて社内外への発信により積極的に取り組んでいこうという意識が強まっている実感があります。
社外役員の皆さまは、取締役会等での議論を通じ執行部に変化を促すという役割をまさに体現されているかと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

社外役員の皆さまは、取締役会等での議論を通じ執行部に変化を促すという役割をまさに体現されているかと思います。

橘高 公久

テーマ 2

当社の非財務情報の開示・発信の在り方について

橘高

次に、当社では主に統合報告書とサステナビリティレポートという二つの媒体を中心に、ウェブも活用しながら各種情報開示を行っています。特に気候変動対応などの非財務情報については、第三者評価の視点も踏まえつつ、自分たちで言葉をしっかりと選びながら伝えていく必要があると思います。情報開示・発信について、お二方からアドバイスはございますか?

森本

統合報告書等当社の各種レポートはINPEX Vision @2022をベースに作られており、今後目指していく姿がステークホルダーに明確に伝わっていると思います。日本での気候変動対応に関する情報開示は、今年から有価証券報告書での開示義務化のように法的拘束力のあるものになりましたので、企業はどのように対応するかが問われていきます。投資家・金融機関だけでなく従業員も開示情報から自社の現状と未来について理解していくので、IR(インベスター・リレーションズ:投資家向け広報)をはじめとした広報の仕事は益々重要になっていくと思います。
また、サーキュラーエコノミー2、生物多様性といった分野の新たな潮流も出始めています。例えばフランスにおいて2022年から生物多様性の情報開示が義務付けられており、日本にも近いうちにこのような流れがやってくるかもしれません。やるべきことは増えていきますが、当社は現状しっかりと対応できていると思うので、しっかりアンテナを張って今の調子で頑張っていただきたいと思います。

2 サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、市場のライフサイクル全体で、資源の効率的・循環的な利用(再生材活用等)とストックの有効活用(製品のシェアリングや二次流通促進等)を最大化する社会経済システム。

木場

水管理や生物多様性など、企業に求められる価値向上の要素は益々増えていくので皆さんのご苦労も絶えないと思われますが、私は、PRできることはどんどん発信していくべきだと考えています。
ただ、一方で、レポートにしても広告にしても「発信したい内容が相手に伝わらなければ意味が無い」ということも繰り返し申し上げてきました。具体的には、専門的な言葉を誰でも分かるようにかみ砕くこと。さらには、一般読者が読んでも腑に落ちるよう、例えば、発電量に関する情報を開示する際は、単位表記だけでなく規模感が伝わるよう、「〇〇県の需要を賄える量」といった表現を併記する、等々の工夫が必要です。こうした意見を率直に受け止め、柔軟かつスピーディーに対応してくださるのがINPEXの強みだと感じています。

森本

木場さんの仰る『「伝える」ではなく「伝わる」ことが大事』というのは私も大学の授業を担当する中でも痛感しているところです。一方的ではいけませんね。

橘高

様々な視点でのコメントをいただき、ありがとうございます。気候変動対応については、引き続き真面目にコツコツと情報開示に努めて参ります。一方で、最近では20~30年先を見通しての投資計画の開示など、数値化自体が難しい情報の開示を求められることもあります。開示が難しい部分についてはその理由を含め理解いただけるよう、丁寧に対話を重ねていく必要があると考えています。
また、木場さんから触れていただいた通り、最近では、ステークホルダーに知っていただきたいことはたとえ小さなことでも随時ホームページに掲載しています。あらゆるステークホルダーと目線を合わせながら、今後も情報発信をしていきたいと思います。
今日同席している高橋さんと森さんは、いずれも気候変動対応、広報という立場で当社の情報開示・発信に携わっていますが、ここまでの話を伺って、いかがですか?

高橋

気候変動対応は全社をあげての取組みなので、円滑に社内の各部門とコミュニケーションを取ることが重要だと思っています。例えば、気候変動関連の話では、とにかく横文字やアルファベットの略称が多く出てくるので、他部署と話すときには横文字や略称を使わずとも分かっていただけるよう、丁寧に説明するようにしています。また、現在当社が推し進めているネットゼロ5分野については、社外向けだけではなく、動画や社内報などを活用しながら、社内浸透施策にも力が入れられています。
他方、社外向けの情報開示については、求められる内容・深度も多岐にわたり、際限がないというのが正直なところですが、そんなときには「誰のため、何のための情報開示か?」という原点に立ち返るようにしています。現在、気候変動対応に関する情報開示のルールは国際的に統一化の方向に向かっています。開示を受ける側、する側の双方にとって効率的、効果的な変化については、しっかり対応したいと思います。

当社事業への深い理解や会社の目指す方向性を社内外に正しく浸透させることが、広報業務の任務であると考えております。そのため、メディア媒体やホームページ/SNSなどを通して、日々積極的な情報発信を展開しておりますが、世間一般的にはなじみの薄いエネルギーを扱う業態であるため、社内で当たり前のように使われている技術用語や専門的なテーマが、受け手には耳慣れないということが多々あります。そうしたことを考慮し、なるべく平易な言葉で説明することを心がけ、受け手側に正しく伝わるような表現をするという点に気を付けています。
また、国内外の社員のみなさんやグループ会社の社員の方にも、当社の広報や広告活動を身近なこととして感じていただきたいという思いから、広報や広告活動に関するアンケートを実施するなどして、ステークホルダーの意見を把握し、業務に反映させることも重要だと認識しております。

発信したい内容が相手に伝わらなければならず、一般読者が読んでも腑に落ちる表現が必要です。

木場 弘子

木場

今のお二人のお話を聞いて、私が心配することは一切無いのだと安心しました。あらゆる取組みにおいて、重要なステークホルダーである従業員のこともしっかりと考えていらっしゃるということが伝わってきました。

気候変動対応は全社をあげての取組みなので、円滑に社内のコミュニケーションを取ることが重要だと思っています。

高橋 真沙子

ステークホルダーの意見を把握し、業務に反映させることも重要だと認識しています。

森 優子

橘高

私も、高橋さんや森さんのように現場に近い社員が一番会社のことを良く分かっており、彼らが刺さると思う情報発信こそが多くの人の心に響くのだと信じています。
本日は改めて、様々なご意見をいただきありがとうございました。引き続き、様々な機会で執行部と社外役員の皆様で積極的な意見交換を行い、INPEX Vision@2022への取組みを加速させるとともに情報開示の拡充にも努めて参ります。